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2006年06月11日

Ben Harper再び

Ben Harper 2年ぶりの日本ツアーとなったベン・ハーパーを追いかけて、初日の横浜から翌日の東京、それから福岡に飛んで広島、大阪、名古屋、そして、最終の東京と全公演7箇所でライヴ撮影をした。交通費や宿泊費など、けっこうな散財だったし、このツアーに合わせるような形で、新しいカメラ、Nikon D200も購入するなど、経済的にはかなりつらかったようにも思うけど、彼らかもライヴからも吸収できたものは大きかった。

 ライヴについては文句なし。というか、見るたびにベンが大きくなっていくのがわかる。前回の来日では、おそらく、ブラインド・ボーイズ・オヴ・アラバマとのプロジェクト、『There will be a light』(US import / 国内盤CCCD)やその結果生まれたライヴ・アルバム、『Live at the Apollo』(US import / 国内盤 (CCCD))の流れなんだろう、ゴスペルに根ざしたヴォーカルのスタイルを見事に吸収した「Where Could I Go」に卒倒するほどの魅力を感じていた。記録を見ると、最初にこの曲を歌ったのは'04年の5月で、初めてこれを見たのはロンドンでのライヴ。一月ほど後、フジ・ロックでの演奏を見て、マネージャーに「また、ベンはとんでもないところまでいっちゃったね」なんて言葉を交わしたものだ。

 そして、それから2年となるのが今回のツアー。また、同じように新しい成長の跡を見るのだが、それが「ロック」だった。ベンを語るときに、ブルースであったり、ソウルやファンク、レゲエといった、ルーツィな要素が多く語られるんだが、今回はストーンズあたりのロックにも通じるものを多分に感じたし、「ロック」していたという言い方がそんな様子を表すのに最適の言葉のように思える。

Ben Harper 今回のツアーを前にして発表されたのがこのアルバム『Both Side of the Gun』(US import / 国内盤CCCD)なんだが、実をいうと、これをそんなに聞いていたわけではなかった。嬉しいことにサンプルが届けられてはいたんだが、国内盤はCCCDという代物で、以前これで痛い目にあっているので、なかなか聞くのに勇気がいるというのが理由かなぁ。まぁ、いろいろと試行錯誤をしてここからサウンド・ファイルを吸い込んで、なんとかiPodで聞けるまでにはしたんだが、じっくり聞き始めたのは今回のツアーが始まってからだった。

 面白いのは、「そういった状況なのに」ライヴで演奏されたこのアルバムからの曲に全然違和感も感じなかったことかなぁ。たいてい好きなアーティストとなると、自分の知っている曲やヒットしたものなんかを期待してしまうのに、新しい曲が「ずっとそこにあった」かのように聞こえていたのが、ベン・ハーパーという特異なアーティストの魅力なのではないかと再認識することになるのだ。聴きたい曲はいっぱいあるけど、なによりもベン・ハーパーという人の世界を体験したい... と、そんな感覚の方が大きいんだろう。

 それに、半端じゃない数のライヴをこなしているのがこのバンド。今回のツアーが終わって1週間ほど休憩したら、今度はヨーロッパだというし、なにやら年内はツアーに明け暮れるようだ。しかも、ここ数年、彼らはそんな生活をずっと続けているように思うんだが、そういったなかでいつだってオーディエンスを飲み込んでしまうようなパワーやエネルギーを培ってきているんだと思う。実際、今回のツアーはどの公演も素晴らしかった。毎回期待以上の興奮や感動を与えてくれるし、オーディエンスを裏切ることは全くなかった。それでも、特に素晴らしかったのは名古屋。終電の新幹線で帰京することもあり、「最後の曲」だと思っていた「Better Way」を撮影してから大急ぎで会場を後にしたんだが、なんと、この後も1曲演奏して大盛り上がりだったとか。名古屋を除けば、どの会場でも締めの曲が「Better Way」だったことを考えると、名古屋のオーディエンスとバンドの波長が合わさってなにかが生まれたんだろう。この話を後で知って、実に悔しい思いをしたものだ。

Ben Harper っても、決してほかのライヴが見劣りするなんてことはなかった。どこだったか覚えてはいないけど、ベンを見ながら、涙を流していた女の子が目に入ったこともあったし、自分自身、アコースティック・セットでは撮影を止めて彼の歌に聴き入ることも多かった。

 ツアーそのものだけではなく、一緒に広島で原爆資料館に行ったこともいい経験だった。いろんなミュージシャンにここを訪ねてほしいと思っているんだが、広島入りしたメンバーが全て「絶対に原爆資料館に行くんだ」といっていたのがこのバンドらしい。ここでもベンは展示されているものの説明を全て読みながら、音声ガイドをも全て聞きながら最も時間をかけて歩いていた。というか、そのペースがあまりに遅くて、みんな、けっこうあきれてしまったんだが... このときも、ベンには広島だけではなく、長崎もあれば、沖縄もあること。東京大空襲で10万人の市民が虐殺されたことなども話していた。そして、今、日本が極度に右傾化して、憲法が潰されようとしていることなど... このとき話していて思ったんだが、「国家なんてくそ食らえ」という思いについて、自分と彼の間に共通していることを発見できて嬉しかったものだ。

 興味深いんだが、新幹線に遅れるかもしれないというのに、出かけていったのが原爆ドーム。ここで、彼が95年に来日したときに知り合ったという友人と再会することになる。あの地震で家が全壊したと話していた彼と、あのとき、神戸の地震の話をベンにして、結局、ベンが実際に神戸に行ってしまったことなどを考えると、なにやら象徴的な偶然がここであったことになる。

 それから数日後、東京の最終公演を終えて、打ち上げのパーティでのこと、ベンがこう言ってくれたのが嬉しかった。

「お前はどう思っているか知らないけど、お前の影響が大きいんだよ。神戸のこと...それ以外にも、お前が知らせてくれたことで、自分の社会的な問題や政治的なことについて大きな影響を受けているんだ」

 さて、これなんぞ、額面通りに受け止めていいかどうかわからないし、今回初めて会ったときにも「日本に来て最初に思ったのが、お前のことだった」なんて、お世辞にしか思えないんだが、それでも嬉しいものだ。自分が彼に影響を受けているように、彼もどこかで自分の影響を受けているとしたら、それこそ素晴らしい人間と人間との関係だと思う。おそらく、彼とはこれからも長いつきあいとなるんだろうけど、久しぶりにじっくりと彼とのインタヴューでもするべき時期に来たのかもしれないなぁ...なんて思っている。

 いずれにせよ、実に濃い10日ぐらいを過ごせたことに感謝。でも、これから数千枚の写真をセレクトしてレポートを作らなければいけないと思うと、ゾッとしますが。


投稿者 hanasan : 2006年06月11日 16:09

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