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2007年02月02日

前略おふくろ様 : 30年昔の名作にはまる

前略おふくろ様 がぁ〜、やっちまったぁ。幾度か「清水の舞台から飛び降りた気分になって」と、高い買い物をしたことがるんだけど、昔から大好きだったドラマのDVDボックス・セット、「前略おふくろ様」を買ってしまった。以前、amazonでエプソンのプリンター、PX-G5100 を購入した結果、送られてきたポイント還元分が5000円。というので、それを使えば「前略おふくろ様」が27000円ほどで購入できる。もちろん、それでも大金なんだが、学生の頃、これを見るために放送される日には必ず下宿に帰っていた記憶がある。それほどまでに惚れ込んだドラマなのよ。だから、前述のように、清水の舞台から飛び降りたのだ。

 当時は、今のようにビデオなんてなかったし... なにせ30年前で... あったかもしれないけど、そんなもの買えるわけがなかったのだ。しかも、うちのテレビは白黒で、カラーじゃなかったしな... それでも、あまりに面白いというので、一度、カセットのテレコで番組を録音したこともある。さらに加えて、その当時発表された脚本集も買っている。今、調べてみたら、「倉本聡テレビドラマ集〈2〉前略おふくろ様」ではないかと思うが、その一回目のシリーズと、あまりの人気で復活したんだろう、パート2の本も買った。当時の倉本聡には完全にはまっていたみたいで、このほかにも、彼の脚本集で東芝日曜劇場でのものを集めたもの買ったし、「さらばテレビジョン」という書き下ろしの本も買っている。要するに、倉本聡のファンだったんだろうなぁ。

 なぜか大学生の頃、演劇部なんてところにいて、芝居に大きな魅力を感じていたってところが引っかかっているのかもしれない。状況劇場や黒テント、つんぼさじき、つかこうへい劇団などなど、いろいろなものを体験してたし、自分で脚本も書いたこともあれば、舞台で演じたこともある。(っても、素人演劇ですが)そんなときにはまったのが倉本聡であり、そのきっかけになったのが前略おふくろ様だったわけだ。

うちのホンカン この当時の倉本聡は、全然売れっ子じゃなくて、昼メロの脚本も書いていた。一応、それも見てみたんだが、全然面白くはなかったなぁ。その一方で、東芝日曜劇場での彼の作品は面白かった。特に傑作だったのは「幻の町」で、主演は笠智衆と田中絹代。このコンビネーションは素晴らしかった。特に、ラスト近くだっけ... 正確じゃないんだが、田中絹代演じるおばぁさんが「私は今までチュッをされたことがありません」と旦那役の笠智衆に迫るシーンがある。このとき、おじぃさんは右を見て、左を見て、誰もいないのを確認して、恥ずかしそうに、一瞬のチュッをするんだな。いいシーンだったなぁ。なんてことを覚えている。

 確かストーリーは、昔住んでいた樺太(だったかなぁ)の町か、そこから内地に引っ越してきたのかどうか、はっきりしないが、その痕跡を訪ねようとするという物語。ところが、痴呆症が始まっていて、記憶が入り乱れてしまっていたりするわけだ。そんな老夫婦を助けようとする人たちとの話なんだが、そこに出てくるのが桃井かおりや室田日出男、北島三郎.... といった流れ。当然ながら、これもビデオがなかったから、一度しか見ていないはずなのに、なぜか自分の記憶に残っている。おそらく、当時の倉本聡にとって年老いた父や母との関係が大きなテーマだったんだろう。それが「前略おふくろ様」に結実しているように思えるのだ。

 その「幻の町」の脚本が収録されている脚本集、「倉本聡テレビドラマ集〈1〉うちのホンカンがあって、76年にこれを購入している。すでに表紙カバーにはカビが出ていて、長らくこれを読んだことがないんだが、東芝日曜劇場で何度が繰り返された「うちのホンカン」シリーズはビデオ化されていて、うちのホンカン(1)から3までがどこかで入手できると思う。おそらく、ビデオ・レンタルで借りられると思うので、興味のある人はそれで見てくれれば、ここでも倉本聡の魅力が満喫できるはずだ。主役は大滝秀治と八千草薫。このあたりでわかるだろうけど、倉本聡が好きな役者の流れが見て取れる。

 さて、「前略おふくろ様」の主役はショーケンこと、萩原健一で、彼が演じるのは下っ端の板前。板長が梅宮辰夫演じる秀次さんで、地元の渡辺組という鳶の人たちのでこぼこコンビが室田日出夫演じる半妻さんと、川谷拓三演じる利夫さん。この二人に加えて、ほとんど語りで登場していたおふくろ役の田中絹代を含めて、すでに故人となっている。特に、ドラマのなかでおふくろが亡くなるシーンがあって... その頃、本当に田中絹代が亡くなったのがやけに悲しかった。あれは、おそらく、パート2の方ではないかと思うが、定かではない。これから見直しながら、また、そのあたりを思い出すことになるんだろうけど、おそらく、間違ってはいないだろう。

 分田上という料亭が舞台になっていて、そこの女将が北林谷栄で、若女将が丘みつ子で、若旦那が桜井センリ。渋い配役だ。そして、そこで働いているのが、渡辺組のお嬢さん、かすみちゃんでそれを演じているのが坂口良子。ひょっこりとサブちゃんを訪ねてくる田舎のはとこが、恐怖の海ちゃんと呼ばれる桃井かおり。その父親役で大滝秀治が、そして、海ちゃんの兄弟役で日野正平と、よくもこれほど癖のあるいい役者をそろえたものだと思う。しかも、端役で芹明香も出ている。神代辰巳監督の「黒薔薇昇天」とか「四畳半襖の裏張り」といった日活ロマンポルノ系の作品で、異彩を放っていた役者で、このあたりを起用する倉本聡のセンスが素晴らしかった。その後も、パート2じゃなかったかと思うが、高橋洋子や風吹ジュンに志賀勝や先日亡くなった岸田今日子が海ちゃんの父親の恋人役で出ていたものだ。

 ストーリーは... といっても、長いシリーズなのでいろいろなエピソードが込められていて、簡単には説明できない。が、結局は、若い人たちと年老いた世代との関係、人間の優しさとか、哀しさとかが、面白おかしく、それでいて、ほろりと悲しく描かれているといった感じかしら。いろいろなことを考えさせられ、影響を受けたように思う。この頃、板前を目指す人が増えたなんて話もあったように、大きな影響をこのドラマが与えたんだと思う。実際のところ、自分が父や母を見る時、このドラマのシリーズを抜きにしては考えられないものがある。特に、「父や母にも、今の自分のように恋をして、生きることに苦しみ、悩み... そんな人生を送ってきたんだ」といった言葉が最終回に語られたのではないかと記憶しているが、その通りだと思う。ここ1年、自分の父親に対するインタヴューを続けているんだが、それは「前略おふくろ様」を抜きにしては考えられないだろう。

 加えて、ここで使われていた音楽も素晴らしかった。テーマは井上尭之と速水清司が担当してたんだが、それよりもドラマのなか、例えば、喫茶店に入っている時に流れる音楽や飲み屋で流れる音楽にはっとさせられたものだ。確かマイケル・フランクスなんて使われていたし、演歌も流れていた。そんなディテールに注目して、今回のDVDを見ていこうと思う。

 残念ながら、DVDがレンタル屋にあるという話聞いたことはないんだが、ビデオは出ているはず。もし、チャンスがあれば、それでも借りてみていただきたい。これこそが、後に有名人になってしまった倉本聡の魅力を凝縮しているように思えるのだ。



投稿者 hanasan : 2007年02月02日 18:06

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