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2007年08月29日

Rico Rodriguez - 「Wonderful World」-12年ぶりの再発売

Rico Rodriguez 今から12年前の95年、ロンドンでスタジオを借りて、初めてやったフォト・セッションの相手がリコ・ロドリゲスだった。本当は午後1時にスタジオで落ち合う約束をして、待っていたんだが、なかなか姿を現さない。どうしたんだろうと思っていたら、本人から連絡が入り、「夫婦げんかをして、家を飛び出してしまった」とか。ありゃま、どうしよう。この日は彼に「フォーマルなスーツを持ってきてくれ」とお願いしていたのに、「悪いけど、持って出られる状態じゃなかった」んだとか。

 さて... と、悩むんだが、「トロンボーンは持っているか?」と尋ねると、「もちろん、楽器は手離さない」ときた。それならばと、ロンドン市内の貸衣装屋を探し出して、スーツを予約。4時ぐらいなら借りられるというので、リコがスタジオにやってくるのを待って、そこに出かけ、スタジオに戻ったときはすでに5時を過ぎていた。それからわずか1時間弱で撮影したのがこのときの写真の数々。このとき一番欲しかったのは、「リコ・ロドリゲスの肖像」というコンセプトで、正装した彼の晴れ姿って感じかねぇ。それを思い通りに撮影することができたのだ。

Rico Rodriguez 同時に、彼の笑顔も欲しかった。なにせ、今回のアルバムのタイトル・トラックは「ワンダフル・ワールド」。ルイ・アームストロングで知られる名曲で、「命の素晴らしさ」を歌ったもの。それは「リコの素晴らしき世界」といったものでもある。だから、彼が満面に笑みを浮かべている「幸せ」な写真を撮りたくてたまらなかったのだ。

 なんでも「ポーズなんてとるものか」というのがリコ。自然体でないといけないという、信念を持っている人物なんだが、この日はシャッターを押しながら、彼と話しまくったのを覚えている。そのときの自分が滑稽でもあるんだが、夫婦げんかで気分最悪だったリコが徐々に表情を崩して、笑みを浮かべだしたときの嬉しかったこと。そんななかで生まれたのがあのとき撮影した写真の数々だ。

「俺は今まで笑っている写真はないんだよ。撮らせたこともなかった。けど、お前のせいだよ」

 とは、セッションが終わってからリコにいわれた言葉。おそらく、あの頃まで誰も目にしたことはなかっただろう、満面の笑みを浮かべたリコの写真を撮影することに成功したわけだ。それをジャケットに使って発表したのが今回再発されることになったアルバムのオリジナル。95年に世界で初めて発表されたのが日本だということもあって、実は、このジャケットこそがオリジナルなのだ。同一内容の作品が海外で発表されているのは知っているけど、はっきり言って、あのジャケットは最低だと思う。アルバムの内容や意味も気にすることもなく、行き当たりばったりの写真とデザインで作られている代物で、あれを見たときには愕然としたものだ。

 ところが、残念なことに、あくまで3年間のライセンス契約ということで発表されていたのがあのオリジナル。すでに入手不可能となって9年が過ぎ、あの、つまらないジャケットの輸入盤しか手に入らなくなっていたのだ。でも、やっとのことでこの作品を再発売させることができた。

 しかも、今回ベースにおいているのは、、あの当時、ジャマイカでのみプレスが許されたアナログのジャケットにベースをおいたもの。それを再現しつつ、加えて、紙ジャケットで二つ折りという素晴らしい形で再発することができたのだ。さらに加えて、あのアナログでしか聞くことができなかったタイトル・トラックのフリューゲルホーン・ヴァージョンも加えている。実をいえば、これこそがリコの望んでいたヴァージョンで、表面上はボーナス・トラックとして加えているにもかかわらず、これをアルバムの曲順に当てはめて、CDで発表されていたキーボード・ヴァージョンはおまけにするという形での発表となった。

 当然ながら、このアルバムはリコの作品。でも、同時に、生涯最高のポートレート写真を撮影した自分の作品でもある。だから、オリジナルを持っていても、買って欲しいと思うし、聞いて欲しいとも思う。加えて、手に取ってみて欲しいとも思う。ジャケットを開いて出てくるリコの写真の素晴らしいこと。自分の写真も素晴らしいし、プリントもいい。加えて、ライナーも加筆し、そのライナーを開くとポスターのようにリコの写真が飛び出してくる。リコのファンには絶対に手にして欲しい作品なのですよ。


投稿者 hanasan : 19:41 | コメント (0)