« 2007年11月 | メイン | 2008年01月 »

2007年12月02日

よみがえれ、ハイド・パークの感動!

Hyde Park Music Festival この「ハイドパーク・ミュージック・フェスティヴァル」の中心人物のひとり、トムズ・キャビンの麻田浩さんとは、ジャクソン・ブラウンの来日公演などで何度も出会っていたし、ときおり話をしていたんだが、けっこう仲良くなったのはサウスバイ・サウスウエストに三味線をベースとしたミュージシャンを連れていったときではないかと思う。極私的なことなんだが、彼がアメリカに渡った60年代、最も見たかったひとりがミシシッピー・ジョン・ハートだったという話を聞いたときに、「つながり」を感じて実に嬉しかったものだ。なにせ、自分の人生の中で最も大切なミュージシャンのひとりがこのちっぽけな老人で、彼が他界する前に残した最後のアルバム、文字通りの『Last Sessions』は、今もよく聴く名作だ。その件についてはここに書き残しているし、初めて彼が動く映像を目にしたDVD『Rainbow Quest』で、実際の彼が想像通りの人だったのがわかってめちゃくちゃ嬉しかったものだ。

 その麻田さんが日本の伝統的な音楽を真正面からアメリカにぶつけたいということで、三味線ツアーを企画したんだが、そのときに彼に勧めたのがライナーも書くことになったうめ吉で、そのグループ御一行、全6アーティストの舞台でMCをやってくれないかと頼まれている。アメリカをミュージシャンとツアーするなんてめちゃくちゃ楽しいじゃないかと、速攻でOKを出していて、そのときのことは幾度か、ここで書き残しているから、覚えている人もいるかもしれない。その彼からしばらくして、ハイドパーク・ミュージック・フェスティヴァルを立ち上げるので手を貸して欲しいというようなことをお願いされたと思う。

Hosono House そのハイド・パークというのは戦後、進駐軍がつけた名前で、本当の名前は稲荷山公園。といっても、我々の世代のロック・ファンにとってみれば、細野晴臣の傑作『Hosono House』が録音された場所、そして、当時、多くのミュージシャンやデザイナーが集まっていた場所として記憶に残っている。あの頃は、彼等が「狭山の米軍ハウス」に住んでいるという話が伝わっただけで、ハイド・パークも稲荷山公園も知らなかったというのが正直なところですが。

 今もこのエリアに住む麻田さんや地元の仲間たちが、当時のシーンにゆかりあるミュージシャンを中心としたフェスティヴァルを企画。それに手を貸してくれというので、大喜びで手伝わせてもらうことになった。我々がやったのは会場から速攻でレポートをウェッブで発信していくエキスプレスの作業で、Smashing MagFuji Rock Expressのスタッフがその中心になっている。その結果はHyde Park Expressで今もチェックできることができるんだが、ちょっとした問題があって、現在、05年版については修復中となっている。06年版は問題ないんですけどね。

  その05年版のDVDがでる出ると耳にしたのはずいぶん昔のようにも思うし、昨年のフェスティヴァルでも注文をとっているように思うんだが、先日、やっと完成品がうちに届けられた。その一部、細野晴臣のライヴの模様に関しては、すでに昨年の9月に発表された『東京シャイネス(初回限定盤)』におまけとして付いていたDVDで見ることができる。とはいっても、文字通り、これは初回限定盤なので、すでに入手するのはかなり難しいようで、なかにはとんでもない値段をつけて売っている中古盤屋さんもあるようだ。

Hary Hosono あのときのライヴがあまりに感動的だったこともあって、『東京シャイネス(初回限定盤)』については発売前から注文。当然、うちのDVDコレクションにはこれがある。ここにはあの日のライヴの模様が全て収録されていて、単純に細野ファンであるだけだったら、これを持っていたらそれで充分だろう。が、あのとき、あの場所にいた人だったら、きっとわかると思うんだが、あるアーティストの演奏が「感動的だった」ということを遙かに超えた「なにか」がここにあったように思う。

 もちろん、そこになんらかのノスタルジアもあったのは確か。なにせ遙かに20数年を超えるギャップを経て見ることになったのが小坂忠であったり、鈴木茂だった。茂の場合は、エンケン(遠藤賢司)のバックで演奏している様子などを見てはいるんだが、彼自身の曲を演奏するのを見たのは30数年前が最後ではないかと思う。記憶をたどっていけば、おそらく、はっぴぃえんどの時代。ソロになってからの彼のライヴを見たことはなかったというのに、あの日、彼がいきなり「スノー・エキスプレス」(名作『バンド・ワゴン』収録)でライヴに突入して、「微熱少年」から、はっぴぃえんどで見て以来の「花いちもんめ」までを演奏するのを見ることになるのだ。あの曲が聞こえてきたときの感激をなんと書けばいいんだろう... 一瞬で身体中の血流が激しくなって、背筋がゾッとして... といった感じかなぁ。上手近くて見ていた女の子がキャァ〜って声を上げたのが記憶に残っているんだが、どこかで自分の中にもそんな気持ちがあったように思う。生で見る、聞く、はっぴぃえんどの名曲は、やはり特別なものだったのだ。

Band Wagon あの時の茂の演奏を撮影したのは自分で、そのときのフォト・レポートはここで確認可能だ。あまり点数は使ってはいないんだが、あのときの感動がどこかでここに封じ込められているようにも思う。とはいっても、なにが理由なんだろう、そのときの茂の映像がこのDVDには全く収録されていないのが実に不満なのだ。なんでだろうなぁ... 自分にとって、細野晴臣と並んで、あれがどこかでピークだったから、なんかやるせない。

 とはいっても、小坂忠の演奏は「機関車」と「夕方ラヴ」(共に名作『ほうろう』収録。ちなみに前者が最初に登場したのは、ミッキー・カーティスがプロデュースした『ありがとう』)といった名曲が入っているし、細野晴臣と小坂忠が一緒にステージに立った2日目の最後、『ありがとう』を一緒に歌ったシーンもここには収録されている。その他にも、今も精力的に活動を続けるセンチメンタル・シティ・ロマンスは「うちわもめ」(細野プロデュースによるデビュー・アルバム『センチメンタル・シティ・ロマンス』収録)とはっぴぃのカバー、「はいからはくち」をここで楽しむことができる。彼等のアルバムで最も好きなのは、一度CD化されたきりですでに入手不能となっている『シティ・マジック』で、この中に収録されている名曲、「夏の日の思い出」も演奏してくれたんだが、残念ながらDVDにそれは見あたらない。

 まぁ、いろいろと個人的な思い入れのある当時の歌がいろいろあるんだけど、アーリー・タイムス・ストリングス・バンドが、やはりこの街とは切っても切れない縁のある西岡恭蔵へのトリビュートとして「我が心のヤスガーズ・ファーム」と「プカプカ」を演奏していて、それが収録されているのが嬉しかったり、マーク・ベノやエリック・アンダーソンが登場したり... と、全体をまんべんなく映像として残してくれたということが、まずは嬉しい。それに客席からはなかなか見えなかったステージ裏の表情やミュージシャンたちがここでの演奏をどれほど楽しみにしていたかが、そういった映像を通して伝わってくるのが嬉しい。

 そんなラインナップや演奏そのものよりも、こうした映像で思い出させてくれるのがここで繰り広げられた数々のドラマ。すがすがしく気持ちよかったあの日の朝の光景、そして、森の中でしか味わえない空気や、真夏の日差しがまぶしかった1日目の午後、そして、まるで会場の中に川でもできたのかと思えるほどの通り雨... とは呼べないほどの大雨に見舞われた2日目のことや、細野晴臣がステージに姿を見せる頃になるとそれが嘘だったかのように思える夜空が姿を見せてくれたといった、誰にもコントロールができなかっただろう、自然の演出がこのDVDを見ていると見事に甦ってくる。

 しかも、そんなドラマを支えたのが、実は、天候や自然ばかりではなく、この日、ここに集まってきた無数の人たちが生み出した得体の知れないエネルギーであることも、これを見ていると、やはりわかってしまうのだ。それをうまく書いてくれた天辰保文さんのライナーの素晴らしこと。さらに加えて、このDVDが当たり前のレコード会社ではなく、このフェスティヴァルを実現させた人たちの手によって制作され、販売されていることも嬉しい。逆に、だからこそ、なんとかしてサポートしてあげなければと思うのだ。なにせ、昨年の赤字で今年は開催されなかったのがこのフェスティヴァル。なんとかこれで赤字を埋めたいと言うんだが、これが売れなければ、また来年もこのフェスティヴァルが戻ってこないかもしれない。あれほど幸せな時間を生み出してくれたフェスティヴァルがなくなるのは、実につらい。そんな意味でも、みなさんにこれを見ていただければと思う。


投稿者 hanasan : 13:32 | コメント (0)