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2008年10月08日
Kitty, Daisy & Lewis - SPの魅力は音楽の魅力か?
このところ、昔からのスカ仲間の来日が相次いでいる。その流れの最初は8月15日。確か、84年にアスワドのバックで初来日したときに仲良くなったトランペッターのタンタンがやってきて、クール・ワイズ・メンとライヴ。20数年にもわたる知己である、そのタンタンが今度はスカ・クバーノのメンバーとして来日したのが数週間後だ。そのときのレポートをSmashing Magにやとっとアップしたんだが、その数日後には、入れ違いのように、クラブ・スカ20周年記念イヴェントにDJのギャズ・メイオールがひさびさにトロージャンズを率いてやってきて、ザ・スキャタライツもやってきた。ギャズと最初の出会いは85年の10月だったと思うから、彼も20数年来の友人だ。さらには、ギャズが居残りして朝霧にDJとして出演して、彼らのクラブで幾度も演奏しているキティ・デイジー&ルイスも登場しているわけです。まぁ、彼らとは知り合いではないんだけど、今年のサウスバイ・サウスウエストで撮影をしているし、どこかでつながっているんだろうなぁと思う。そのおかげでこのところ撮影しまくりで、自分のレポート作成に遅れが出ているし、このブログの更新もできない状態が続いているんだが、それはさておき、ここに登場したみんながギャズのクラブ、ギャズズ・ロッキン・ブルースの仲間だというのが面白い。
そんなひとり、スカ・クバーノのヴォーカル、ナッティと東京でのライヴの後、一緒に飲みに出かけていろいろなことを話した。彼も、当然のように、ギャズの仲間でDJでもある。彼と知り合ってからも、もう10数年だと思うんだが、そんな流れで「飲みに行こうぜ」ということになったのだ。このときに教えてもらったのがキティ・デイジー&ルイスが脚光を浴びるようになった背景の話。これがめちゃくちゃ面白いし、実に納得できる。今年春、オースティンで見て以来、彼らの魅力にはまりまくっていたんだが、こんなに面白くてエキサイティングなバンドが飛び出してきた背景にはこんな動きがあったわけだ。
といっても、そのままでは話がわからないと思うんだが、これがそのときに撮影した写真で、そのときのレポートがこちら。それを読んでいただければ、だいたいのことはわかるんだが、要するに彼らが演奏している音楽は、「古い」のだ。そう、全く新しくない。そのあたり、自分が初めてイギリスのクラブ・シーンを取材した23年前にギャズのクラブで、あるいは、ジャズでみんなを踊らせていたポール・マーフィーというDJがやっていたクラブで体験したのと同じで、今の音楽産業の流れのなかでいえば、全く商売にならない古典的な... 20年代から50年代の音楽を演奏しているわけだ。
それだけだったら、まぁ、アメリカのJanet Kleinあたりにも近いのかもしれないんだが、ジャネットがあくまでレトロなタッチを大切にしながら、ほんわかしたムードを作り出しているのに対して、キティ・デイジー&ルイスに感じるのはざらついた感覚。なにやら、どこかで「ロック」しているというか、ぎとぎとにワイルドな衝撃を与えてくれるのが嬉しいし、興奮させられるのだ。それが面白い。しかも、すでに78回転のSP盤でシングルなどを発表していた彼らがやっと発表したデビュー・アルバム『キティ・デイジー・ルイス』(国内盤 / UK import / UK import + '10 analog)をチェックしてみたら、amazonには載っていないのかもしれないんだが、78回転のSP盤によるボックス・セットがでているというのだ。今時、誰がこんなものを買うんだぁ? と、そう思っても不思議ではないと思うのだ。(ひょっとして、最後のUK import + '10 analogがそれに当たるのかもしれないけど)
その理由を説明してくれたのがナッティなんだが、なんでも、今、ロンドンのクラブではSP盤がちょっとしたブームになっているんだそうな。実際、ナッティだけではなく、キティ・デイジー&ルイスの男の子、ルイスもSP盤を使ってDJをしているというし、SP盤しか使わないクラブも出てきているとのこと。なんでまた? と思うのだが、音がまるっきり違うというのだ。おそらく、ギャズ・メイオール周辺の音楽が好きだったら、(それだけじゃなくて、ルーツ系のレゲエやスカ・ファンも同じだと思うが)彼らがこだわっているのは、当然のようにCDではなく、アナログ。しかも、12インチではなく、7インチの45回転なのだ。それも、ジャマイカ産で、これを使うと音が全く違うというのだ。要するに、分厚くてびしびし感じて、生々しいというか... ナッティの話によると、SP盤、78回転のものになると、その魅力が倍増するんだそうな。
実際のところ、SP盤で音楽を聴いたことはないし、再生する装置もない。だから、それがどれほどの違いを聞かせてくれるのか、自分には全然わからないんだが、ジョー・ストラマーが亡くなった2002年、グラストンバリー・フェスティヴァルにそういった場所があって、彼がそこで一日中SP盤を聞いていたという話も聞いている。おそらく、あのときは、蓄音機と呼ばれるものでの再生ではなかったかと思うんだが、それほどの魅力があるんだろう。それがPAを通して再生されたら、どんな音になるのか、実に興味深い。実際、20数年前にギャズのクラブを初めて訪ねて、クラシックなブルースやR&Bをバシバシのノイズ入り45回転ででっかい音で聴いたときの衝撃はでかかった。ちんまりと小さいプレイヤーで聞くのと、身体全体で大音量で聞くのとは大違いで、この体験によって音楽そのものの見方や聴き方が完全に変わってしまったという体験をしている身としては、SP盤の魅力も充分に想像できるのだ。さらに加えれば、「だからこそ」キティ・デイジー&ルイスといったバンドが登場してくるんだろう。
さて、そのバンドと再会したのが先の朝霧ジャム。いやぁ、素晴らしかった。会場でアルバムを売っている人たちの話によると、ライヴ終了後にいきなり彼らのアルバムが売れ出したということだし、彼らの演奏を見たGラヴが、「来年のアメリカ・ツアーを一緒にやってくれないか」なんてアプローチもしたほどだ。一番下のキティが15歳で、お兄ちゃんのルイスが18歳で、おねぇちゃんのデイジーが20歳。おかぁちゃんのベースは、その昔レインコーツという、女の子ばかりのパンク・バンドのメンバーで、うちの家にも彼らのアルバムがあるはずだ。リズム・ギターを担当するお父さんは70年代終わりから80年代のある時期までアイランド・レコードのマスタリング・エンジニアとして仕事をしていたとのこと。なんてぇ家族なんだと思うけど、こういった要素が全部詰め込まれているのが彼らの音楽だというのがよくわかる。
面白いことに、そのお父さんと朝霧で話し込んで、とても仲良くなったんだけど、アイランド・レコード時代の話なんて、めちゃくちゃ面白かった。リハーサル・ルームでボブ・マーリーとウェイラーズを見たときには文字通り、鳥肌が立ったとか... それに、最近の音楽やCDやデジタル系に対する考え方や見方、感じ方が、自分とうり二つなのだ。といっても、彼の場合には、まるでコレクターのように昔の楽器からオーディオ機器、録音機器を集めるようなところがあって、今回発表した彼らのアルバムも、そんな自宅に作ったスタジオで録音したんだとか。しかも、カッティングも自分でやっているようで、そのこだわりには驚きを隠せないのだ。
これから、あのときのライヴのレポートを作成するんだが、彼らの楽器を見ていても同じことが言えるのが面白い。親父さんの演奏しているギターはボロボロの年代物。日本でのたった1日だけの演奏だというので、楽器の一部をレンタルで手配したらしいんだが、「新しすぎて、いい音が出ない」と文句を言っていたんだそうな。そんなこだわりのある音楽で真っ向勝負をしているバンドがキティ・デイジー&ルイス。早くアルバムを聴かなければ... と思うんだが、SP盤を入手しても、さすがに、聞くための装置がない... と、ちょいと頭を抱えているところです。
投稿者 hanasan : 2008年10月08日 08:56