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2008年11月13日

いつも通りの安物買い

Dave Brubeck こんなことを書いている場合じゃないだろう... と思う。まるで「戦前そのまま」の特高のような警察の暴力が横行し、誰だっていつでも犯罪者に「仕立て上げられる」状況を目の当たりにして、こんなことを書いていていいのか? と思う。渋谷の「麻生首相の家を見に行こう」という映像をYou Tubeで見た後、同じような「警察の横暴」や「まるでやくざ」か、それ以上に「まんまやくざ」な警察の実態から、職務質問の名を借りた嫌がらせに「暴力」を記録した映像を次から次へと見てしまうと、日本のどこに民主主義があるねん! と思うのだ。それほどに「危険な時代に」自分が生きていることを感じているときに、こんなことを書いていて... という。自己嫌悪を感じならが、それでも、音楽が好きだというアホさ加減にあきれてください。(同時に、You Tubeで探してみてください、こういった映像を。それがけっして、特別なことじゃないのがわかるから。今日、明日にでも「自分だって捕まるかもしれない」ことを現実に認識してしまうと、ゾッとしますから)

 例によって、amazonとのアフィリエイトのおかげで、頻繁にチェックしているんですけど、ときおり、「なんでこんな値段で...」と思えるアルバムを見かけることがあるんですね。実は、これを書く直前にもマイルス・デイヴィスのこんなボックス・セット、『Workin', Relaxin', Steamin'』をみつけてしまいました。ジャズの名門、プレスティッジからコロムビアに移籍するにあたって、契約分を「消化する」必要から2日間でアルバム4枚分のレコーディングを一気にやっているんですが、そのうちの3枚を収めているのがこのボックス・セット。なんで『Cookin'』1枚が抜けているのか、全然理解できないんですが、それにしても、他の3枚が一緒に入っていて、なんと(今日の段階で)869円。まるで冗談のような値段で売られています。

 と、そんな「安物」として買ってしまったもので、傑作や掘り出し物がいっぱいあるんですけど、その1枚がデイヴ・ブルーベックの『Jazz Impressions of Japan』。ジャケットからして「なんでジャズ?」って思えるんですが、1曲目からにんまりしてしまって、今じゃ、愛聴盤です。

細野晴臣 まぁ、これが録音されたのは東京オリンピックの頃らしいんですが、あの直前に初来日したデイヴ・ブルーベックがそのときの印象をまとめたらしいんだけど、これは面白い。ってぇか、細野晴臣が、例のエキゾチカ三部作(『トロピカルダンディー』、『泰安洋行』、『はらいそ』)を録音したときのネタ元の一枚じゃないかなぁと思ってしまいました。一般的にマーティン・デニーの『The Exotic Sounds』がベースにあるというのは有名な話なんですけど、このデイヴ・ブルーベックも「来てる」なぁ。曲のタイトルだってTokyo Traffic(トーキョー・トラフィック)からOsaka Bluesオーサカ・ブルース)、Fujiyama(フジヤマ)にKoto Song(コト・ソング)という流れが、「東京ラッシュ」「ジャパニーズ・ルンバ」「香港ブルース」とかに似ていません? オリジナルじゃなくても、そうであっても、なんかがどこかで微妙に似ているのです。もちろん、その日本人であって日本人でない「異人の目」で世界を見つめながら、「空想」のアジアを旅している感じがするのが細野の作品群で、当然、こういった視線が核になっているんでしょうけど。それはともかく、今回のこのアルバム、『Jazz Impressions of Japan』は大当たり。ちょっと高めの886円でしたけど。円高が続いているので、もっともと安くなっていくんでしょうかね。

 でもって、なぜか突然サンタナなんですけど、昔のアルバムをチェックしていたら初期のもので持っていないのがあるなぁ... とは思っていたんですね。もちろん、セカンドの『Abraxas(邦題 : 天の守護神)』が絶対の名作で、その他、名作と言えば『Caravanserai(キャラバンサライ)』や『Borboletta(不死蝶)』あたりがあるんでしょうけど、当然のようにそういったアルバムは持っているんです。でも、これも800円ぐらいでアメ盤が売られているので、これをきっかけに『Festival(フェスティヴァル)』とWelcome(ウェルカム)』に、名ライヴと言われている『Carlos Santana & Buddy Miles! Live!(ライヴ!)』や超絶ギタリスト、ジョン・マクラフリンとの『Love Devotion Surrender( 魂の兄弟たち)』まで、全部買ってしまいました。もちろん、不満は全然なし。特に、『Carlos Santana & Buddy Miles! Live!』なんぞ、さすがですもの。まぁ、ちりも積もってなんとやら。結局、けっこうな金を使っているんだけど、子供の頃、お小遣いを貯めて、メシ代も使わないで空腹に耐えて少しずつしか買えなかったそのあたりのアルバムをむさぼるように買い漁って聴き漁っているという感じなのです。

J. Geils Band それに、Jガイルズ・バンドのライヴ、『Showtime』も776円で購入。かなり前になるんですが、ピーター・ウルフが来日したときに圧倒されたのがそのライヴ。なにせ3時間ぐらいもぶっ続けで演奏して、「俺たちの最長記録は3時間20分の休憩なしだから、全然平気だよ」なんて言っていたのを思いだします。その頃、正直言って、ヒット曲ぐらいは聴いたことがあっても、アルバムなんぞ持ってなかったというのが、彼がフロントになっていたJガイルズ・バンドのアルバム。というので、これをきっかけに買ったわけです。なんでもアメリカのストーンズとか呼ばれていたらしいけど、楽しい、楽しいアルバムですな。

 あとは、前日ちらりと書いたアレサ・フランクリンの超名盤『I Never Loved a Man the Way I Love You』に、大昔に聴いてあまり覚えていないというので、超絶テクニックで誰もが目を剥いたというギタリスト、アル・ディメオラの『Elegant Gypsy(エレガント・ジプシー)』や『Casino(カジノ)』も買いました。実は、その伏線として、ジョン・マクラフリンに、また、はまっていたんですけどね。ひさびさに棚から取り出してiTunesに吸い込んだのがMahavishnu Orchestra(マハビシュヌ・オーケストラ)の名作『Birds of Fire(火の鳥)』やShakti(シャクティ)の『Natural Elements』。おそらく、昨日のロドリゴ・イ・ガブリエラのライヴが始まる前に流れていたのは、このあたりの曲ではないかと思うんですが、ジョン・マクラフリン率いる両バンドの名前を決定的にしたのが上述のアルバムで... 他のアルバムも聴いてみたいなぁと思っていたわけです。というので、同じく800円ほどの価格で手に入れたのは、マハビシュヌ・オーケストラの『Visions of the Emerald Beyond(エメラルドの幻影)』で、これもよかったなぁ。その他、マハビシュヌ・オーケストラ名義の『Apocalypse(黙示録)』やジョン・マクラフリンの名で出た『Electric Guitarist(エレクトリック・ギタリスト)』あたりもチェックした。それに、アル・ディメオラとジョン・マクラフリンにパコ・デ・ルシアというとんでもないギタリストが集まって作ったスーパー・ギター・トリオの『Passion, Grace & Fire(パッション,グレイス&ファイア~情炎)』とか... まぁ行き過ぎというか、飛びすぎというか... いずれにせよ、超絶ギタリスト三昧で聴きまくっております。なにやら、昼飯1回分で1枚のアルバムを購入するというのは、学生の頃となにも変わっていないようですけど。

Jim Hall こうやってみていくとジャズ系のアルバムをかなり買っているのはよくわかるんですが、ウェザーリポートの『Mr. Gone(ミスター・ゴーン)』にフレディ・ハバードの『Straight Life(ストレート・ライフ)』も買ったなぁ。なぜかCTIレーベルの傑作がこのあたりの価格帯で再発されているのが多くて、最近ではないですが、いわゆる名盤をそういった安値で買い集めていったこともあります。例えば、チェット・ベイカーの『She Was Too Good to Me(シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー)』。昔は2曲だけ収録されている彼のヴォーカルが聴きたいだけの理由でこれを買ったんですが、他の曲も全然悪くない。ちょっと軽い、いわゆるスムーズ・ジャズって言うのかなぁ、このあたり。CTIはフュージョンの先駆け的なレーベルで、微妙な名盤が多いのですよ。ジム・ホールの『Concierto(アランフェス協奏曲)』とか、デオダートの『Prelude( ツァラトゥストラはかく語りき)』もそんな値段で今でも入手可能です。

 と、相も変わらず、音楽中毒。こんな人間の書くことをまともに受け取ってくれるのかどうか全然知りませんけど、今回のド頭に書いていることは、これからの日本を考えたときにとてつもなく重要な意味を持っているんですけど、こんな日本でいいですかねぇ?


投稿者 hanasan : 08:55 | コメント (0)

2008年11月11日

日本は北朝鮮か? は、その通りです

 なにやら、軍隊のお偉い人がおっしゃった。

「こんなことも言えないのだったら、日本は北朝鮮か」

 え? その通りと違いますの? 首相も政治家も世襲制で、報道機関はお上のお言葉の垂れ流し。話している人が厳つくないというのだけが違いで、柔らかくそれをやっているのではございませんか?


 なんでもお金持ちの家を見に行こうとした人たちが捕まったらしく、(後に釈放されましたけど)そのときの映像を見てみると、こんなのあり? と思ってしまいません?

 これ、そのときの映像ね。

10/26 麻生邸宅見学に向かおうとしたら逮捕

 そんでもって、それをする前にお巡りさんと打ち合わせしている映像も出ているのですね。

渋谷署警察官との事前打ち合わせ@ハチ公前

 というので、その釈放後に記者会見しているんですが、そのときの様子がこちら。

記者会見/「麻生太郎邸拝見ツアー」参加者3名不当逮捕

 えっと、その昔、フランコの時代、スペインでは3人以上が集まるのに届け出も必要で、そうしなかったら、捕まっていたようです。日本も、そうなんでしょうかねぇ。

 それと、初めて知りましたが、「コーボー」って、公務執行妨害の意味なんですね。まるで水戸黄門の印籠みたいな響きを持っていますな。コーボー... 笑っちゃいけないんだけど... ひどい世の中になったものです。そのお金持ちは「宣伝」のために学生とは一緒におつきあいで飲むのに、飲む金もなくて困っている人たちには面と向き合って話しもしないんですかね。


投稿者 hanasan : 12:30 | コメント (0)

2008年11月05日

Change Is Gonna Come - いいニュースじゃないか!

Sam Cooke 他の国の大統領選挙だというのに、テレビに釘付けになっった11月5日。ドキドキしながら、選挙結果を見つめ、マーチン・ルーサー・キング牧師の語った「夢の一端」がやっと形になった歴史的な瞬間を祝福していた。実を言えば、その選挙の始まったときに書いていたのが前回のブログ。そこに記した「期待」が現実となったわけだ。

 そのニュースを聞いて、(あるいは、見て)当然のように思い浮かんだのは、そして、「聞いた」のは名曲、「Change Is Gonna Come(チェインジ・イズ・ゴナ・カム)」。なにせ、彼らが求めてやむことのなかった「変化が来た」のだ。言うまでもなく、オリジナルはサム・クック。『Ain't That Good News(いい知らせじゃないか)』と、実にタイムリーなタイトルのアルバムに収録されていて、このヴァージョンが素晴らしいのは言うまでもない。なにせ、ボブ・ディランの名曲で、名盤、『The Freewheelin' Bob Dylan』に収録されている「風に吹かれて」を聞いて、「これこそ私たち、黒人が作らなければいけない曲だった」と生まれた曲だ。日本では一般的に「政治的」な部分が見落とされがちなサム・クックなんだが、彼がどれほど政治的な存在だったかは以前見たDVD、『Legend』でも語られていたように思う。これについてはこちらにレヴューを残しているので、興味のある方はチェックいただければと思う。なにせ、この曲があまりに危険だと思われたのかどうか、彼が暗殺されたという説があるほど。それほどにこの曲が大きな政治的インパクトを持っていたわけだ。

 実を言うと、勝利宣言をしたオバマのスピーチを聞いた時のこと、どうも彼がこの曲のことを意識していたのではないかと思えたんだが、考えすぎだろうか。「Change」というフレーズを選挙運動でずっと使っていたわけだから、当然といえば当然なんだが、彼が「A Chnage Has Come」とかなんとかというフレーズを口にしたとき、サム・クックのことが頭をよぎったのではないかと思うし、あの場にいた、そして、世界でそれを見つめていた多くの音楽ファンの脳裏でこの曲が鳴っていたのではないかと思う。

 といっても、おそらく、この歌を知らないと話は始まらないわけで、まずは彼のMy Spaceを訪ねてくれたら、この不朽の名曲を聴くことができる。簡単に歌の意味を書けば、こんな感じになるんだろう。

「俺は川のそば、テントの中で生まれた。ちょうどその川が流れるように、漂い続けてきた。そうずっと... でも、いつか変化は訪れる。そうに違いない。つらい人生だった。でも、死ぬ勇気さえないんだ。空の向こうになにがあるのかなんて、わからないじゃないか。(中略)もうダメだと思ったことが幾度もあった。もう生き残れないと。でも、また、歩き続けられるようになった。長い、長い時間がかかるかもしれない。が、わかるんだ。必ず、変化が生まれるということが」

Otis Redding 文字にして起こせば、どれほどのリアリティも感じられないかもしれないが、これをあの素晴らしい声で聞くと、どうしようもなく胸を締め付けられるのだ。それが歌の持つ力なんだろう。当然ながら、この歌が示しているのは彼個人の人生のことではなく、ここに照らし出されているのはアフリカから奴隷としてアメリカ大陸に拉致されてきたアフリカ人、アフリカ系アメリカ人の歴史だろう。その痛みや苦しみをサム・クックの歌から感じることができる。同時に、それでもけっして前を向いて歩くことを止めなかった彼らの(だけではなく、全ての虐げられた人々の)気持ちが、どこかで自分とつながるのを感じるのだ。

 あまりにも素晴らしい曲だからなんだろう。この曲は数え切れないほどの人たちにカバーされていて、オバマ大統領誕生をきっかけに、iTunesで自分のコンピュータを検索して次々と聞いていったんだが、サム・クック同様に頭をぶん殴られるほどのインパクをともっているのがオーティス・レディング。名作中の名作『Otis Blue』というアルバムに収録されているもので、しばらく前に、デラックス・エディションというのが発表されたのをきっかけに購入している。とはいっても、この曲は、その昔入手した、黒人音楽の「レベル(プロテスト)・ソング」を集めたコンピレーション、『Movin' On Up』で幾度も聴いていたもの。やはり、さすがにオーティス。素晴らしいのだ。

Aretha Franklin そして、先日、やたらに安い値段で売っているからと入手したアレサ・フランクリンのアルバム、『I Never Loved A Man The Way I Loved You』にもこの曲が入っていた。正直言うと、これまでベスト・アルバムしか持っていなかったんだが、名盤だと言われているこのアルバムが900円弱で買えるというので、つい(大喜びして)買ってしまった。なにせ、子供の頃、ロックやフォークを中心に聞いてきた自分にはソウルまで手を伸ばせなかったこともあって、大人になってから必死になってこのあたりを聞き漁りながら、勉強しているわけだ。それにしても、よくもこんな名作アルバムを聞き逃していたんだろうとあきれかえっているんですけど。

 そんな自分がずっと愛聴していたのがザ・バンドの『Moondog Matinee』に収録されたヴァージョン。以前、このリマスター・ヴァージョンのCD再発がボーナス・トラック付きの廉価版で出た頃に何度目かのCD購入となっているんだが、このヴァージョンも泣ける。ずっと長い間、リチャード・マニュエルがヴォーカルだったと思いこんでいたんだが、どうやらリック・ダンコらしく... これが、また素晴らしい。正直言って、ザ・バンドがカバー・アルバムとして作ったこのアルバム自体は、それほどいいと思ったことはないんだが、この曲だけは飛び抜けて素晴らしく、後に、『Island』に登場するカバー、「Georgia on My Mind」と並んでザ・バンドによるカバーの傑作だと思っている。(もちろん、ディランのカバー、「I Shall Be Released」もすごいのは言うまでもないんですが)

the Neville Brothers そして、前回のブログにも登場したザ・ネヴィル・ブラザーズの傑作、『Yellow Moon』に収録されているヴァージョン。ヴォーカルは、当然のようにアーロン・ネヴィルで、彼は後にソロで発表した『Bring It on Home... The Soul Classics』でもこの曲を取り上げている。これでもかという名曲のオンパレードとなっているこのアルバムは、どこかでソウル入門編的な要素もあるけど、とてつもないエネルギーを感じさせる『Yellow Moon』のヴァージョンの方が、正直、遙かに好きですな。

 その他、自分のiTunesのリストには、珍しいビリー・ブラッグのヴァージョンがあって、これは以前買ったボックス・セット、『Volume I』に入っていたものなんだが、単体では『The Internationale/Live and Dubious』に収録されている。それに昔から持っているアルバムで、British Electric Foundationという、ヘヴン17が中心となって制作したカバー企画アルバム、『Music Of Quality And Distinction Volume Two』にはティナ・ターナーのヴァージョンが入っていた。

 とはいっても、カバーは数限りない。試しにと思って、You Tubeでチェックしてみたら、あるわ、あるわ... ソウル界の、いわゆる大物で言えば、まずは、Al Green(アル・グリーン)Patti Labelle(パティ・ラベル)Luther Vandross(ルーサー・ヴァンドロス)Tina Turner(ティナ・ターナー)あたりがみつかるし、初めて聞いたのでぶっ飛ばされたのは、なんとPrince Buster(プリンス・バスター)Ken Parker(ケン・パーカー)のスカ・ヴァージョン。脱帽です。全然知りませんでした。ごめんなさい。っても、映像はなくて写真しか写ってませんけど。音楽だけで充分完璧です。ちょいと若い世代ではSolo(ソロ)というのがみつかった。誰なんだろう。これも素晴らしい。それに、自分にとってはやたらと懐かしいTerence Trent d Arby(テレンス・トレント・ダービー)。デビューした頃にインタヴューした彼がこの曲を歌っていたのって... 知らなかったなぁ。それにしても、この映像を見ていれば、歌の意味が実によくわかる。あと、おそらく、大統領選のタイミングを見て発表されたんだろう、Seal(シール)のヴァージョンもなかなかいい。まだ彼が無名の頃、プッシュというグループの臨時ヴォーカリストとして来日していて、成田からの車のなかで彼にいろいろと音楽を聞かせてあげたことを思い出す。また、Gavin DeGraw(ギャヴィン・デグロウ)の映像を見ていると、「黒人解放運動」のシンボルであったこの曲がもっと大きな意味を持ってどんどん成長しているのがよくわかる。

 同時に、こうやって検索していると気付くのだが、おそらく、無数の人々がこの曲と今回の大統領選挙を結びつけて、独自にビデオを編集制作してアップしていったんだろう。オリジナルをバックにしたこのヴァージョンやザ・シュープリームスを使ったこのヴァージョンなんぞその典型で、それ以外にも、無数のミュージシャンがこの曲を歌い、演奏して「変化」を生み出そうとしていたことに驚かされるのだ。たまたまこの検索で見つけたBeth Hartなんてゾクゾクさせるし、探せばいろいろなものが出てくるんだろう。

 いずれにせよ、今回の大統領選挙で再び音楽の持つ計り知れない力を再認識したように思える。もちろん、これで全てが「好転する」なんぞという妄想は持ってはいない。が、少なくとも、彼ら無数の人々が「歴史」を作ったのは確かであり、逆に、歴史からなにも学ぶことなく戦前を美化する危険な人物が軍隊のトップに、そして、政府のトップに立ている日本の救いようのない危うさに驚愕するのだ。こういった動きに対して、それぞれの個人が動かないといけないと思う。アメリカの人々が口にしていたように、「我々にはできる」のです。選挙に行き、政権を変える。まずは、自公政権を倒さないといけないと思う。もちろん、日本の民主党に一片の期待もしていないし、彼らは自民党と同じ穴のむじなだとしか思えませんが。それよりも第三極を大きくしないといけないと思う。

 というので、このブログの締めはBob Dylan(ボブ・ディラン)だろうな。ここでも司会の男性に語られているように、彼の「風に吹かれて」がサム・クックを触発して生まれたのがこの名曲、「Change Is Gonna Come(チェンジ・イズ・ゴナ・カム)」。それをここでディランが歌っていることに感無量となってしまうのだ。そして、おそらく、そのサム・クックに応えるようにディランが歌ったのが「The Times They Are A Changin'(ザ・タイムズ、ゼイ・アー・ア・チェインジン)」ではありますまいか。全てが繋がり、転がり、変化していく。つくづくとそう思います。


投稿者 hanasan : 20:00 | コメント (0)

2008年11月01日

Wattstaxの夢が現実になるとき(後編)

Rosa Parks 今では信じられないかもしれないが、わずか45年ほど前までアメリカでは有色人種に、人間にとって当然の投票する権利が与えられてはいなかった。要するに、「民主主義の国」「平等の権利のある国」という看板を掲げ、他の国を軍事力で「解放してきた」とされるアメリカには「差別が合法的なもの」とする、まるで南アフリカのアパルトヘイトと同じような野蛮きわまりない体制が当たり前のように存在していたのだ。そのひとつが南部を中心に施行されていた人種隔離法だった。公共交通機関の列車やバス、学校から病院、ホテルに公衆便所にレストラン... どこでも白人が優先され、目を覆いたくなるような「差別」が公然と幅をきかせていたわけだ。

 それが最もひどかったのがかつて黒人を奴隷として扱っていた南部で、ある事件をきっかけに注目されることになったのがアラバマ州だった。実は、アメリカの時代を揺るがし、変革することになった「公民権運動」(有色人種の市民権を獲得する運動)の始まりは、この州のモンゴメリーに住んでいた42歳の女性、ローザ・パークスから始まっている。ご多分に漏れず、あの当時肌の色によってエリアを分けられていたのがバスの座席。しかも、白人乗客が増えると黒人は席を白人に譲らなければいけないとされていたのだが、1955年の12月1日、それを拒否したのがローザ。その結果として、彼女は逮捕され、それをきっかけにその地に住んでいた若者の牧師、マーティン・ルーサー・キングを中心とした黒人解放運動が全米に広がっていくことになる。そのローザのことを歌ったのが来日したばかりのネヴィル・ブラザーズの名作、『Yellow Moon』に収められている「シスター・ローザ」で、彼女の人生を映画化した作品で、現在、入手可能なのが『Rosa Parks Story』という作品だ。

the Neville Brothers 結局、彼女の動きに感銘を受けた地元の人たちによる1年にも及ぶバス・ボイコット運動が実り、全米からのサポートが加えられることによって、最終的に人種隔離法がアメリカの憲法に違反しているという決定につながっていくのだ。それによって、公民権運動、要するに黒人(有色人種)であっても選挙に投票できるようにする、人間にとって当然の権利を獲得する運動が拡大していくという流れなんだが、数行でこんな歴史を書けるものでじゃないのは明らかだ。なにせ最底辺に住んでいる多くの有色人種にとって公共交通機関は生活の足であり、それをボイコットするということは、現代に住む人間からいえば「あり得ない距離」を毎日のように歩かなければいけないことになる。今の我々にそんなことが可能かといえば、正直言って、不可能だろう。が、それをやってのけたのが彼らなのだ。

 そんな彼らを支え、闘う仲間の絆を深めていったのが歌だった。苦しみと絶望のなかから生まれ、自らに言い聞かせるように、そして、互いを励ますように歌われたのはゴスペルやブルース。その歌や音楽が放つエネルギーや影響は絶大だった。すでに音楽が商品としてしか認識されていないような時代や場所に生きている我々にはとうてい想像できないだろう。『ワッツタックス』にも姿を見せているザ・ステイプル・シンガーズや、インプレッションズにサム・クックといったゴスペルからソウル界にフォーク界ではプロテスト・ソングが脚光を浴び、PPMからジョーン・バエズ、そして、ボブ・ディランらが「民の声」を代弁していくようになるのだ。

 その運動の象徴的な出来事こそが、20万人を全米から集めた1963年8月28日のワシントン大行進であり、そこで行われたマーチン・ルーサー・キング牧師の演説、I Have A Dreamだった。もし、少しでも時間があれば、このリンクをクリックして、彼の演説を聞いて欲しいと思う。この演説がどれほどの意味を持ち、インパクトを与えたか... ブラック・ミュージックのみならず、リベラルだとされるアメリカ音楽を好きな人には、感じることができるはずだ。その後のジャズ、ブルース、ソウルの曲やアルバム・タイトルなどに幾度となく姿を見せるのがこの演説で聞こえてくるフレーズ。というよりは、この演説そのものが音楽的であり、歌であり、訴えなのだとさえも思うこともある。それほどに、この演説は素晴らしかった。

Stevie WOnder 面白いことに、これを初めて意識したのはスティーヴィー・ワンダーの名曲、「ハッピー・バースデイ」(ボブ・マーリーの影響を多分に受けて生まれたという『Hotter Than July』に収録)という12インチだった。キング牧師の誕生日をアメリカの祝日にしようというアピールを持って、これが発売された当時、B面に収録されていたのが彼の演説の数々。自らの死を予言したことで知られる「プロミスト・ランド」もここに含まれていたのだが、なによりも胸を打ったのはこのI Have A Dreamだった。今、きちんとワーディングされたものを見てみると、思っていたこと以上のことが語られているんだが、それでも、頭の中にこびりつくことになったのはこの下りだ。

『いつかかつての奴隷の息子達と奴隷所有者の息子達が、兄弟愛というテーブルにつけることを。 私の4人の子ども達がある日、肌の色ではなく人物の内容によって判断される国に住むことを。』

 そんな夢を「私は抱いている」と語っているのだが、今、アメリカの大統領選挙の日に、ひょっとすると、そんなキング牧師の夢の片鱗が形になろうとしているのではないかと期待してしまう自分がいる。もちろん、正直言って、アメリカの大統領にこれまでいかなる期待も希望も持ったことはなかった。民主党であれ、共和党であれ、鬼を選ぶか、悪魔を選ぶか... というのが大統領選挙だと思っているからだ。が、どこかで今回の選挙にはかない期待を持っているのを否定できない。これで、ひょっとすれば、アメリカに変化が訪れるのではないか...と、そんなはかない期待を胸に、あの選挙の結果を見つめていようと思う。



投稿者 hanasan : 14:53 | コメント (0)