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2009年09月03日

Everything Must Change...移りゆくすべてに

Nina Simone 歌にのめり込む瞬間というのがある。これまでに幾度となく聴いていて、知っているはずなのに、なんとも思わなかった歌に、なにかの拍子にのめり込んでしまうとでもいえばいいのか... そんなこともある。このとき聴いていたのは希代のアーティスト、ニーナ・シモンの名盤の一枚、『Baltimore(バルティモア)』。70年代後半のジャズ・フュージョン好きを虜にしたレーベル、CTIで発表されたアルバムで、これまで最も好きだったのはタイトル・トラック。ちょっとレゲエ・タッチを持つこの曲はランディ・ニューマンの作品なんだけど、今日はそれではなく、「Everything Must Change」という曲で、「いやぁ、この曲はいいなぁ...」と息をのむことになったのだ。なぜか? 理由は全くわからない。

 ひょっとすると、このところ仲間が亡くなって、ちょいとセンチメンタルな気分になっているからかも。なにせ、タイトルが意味するのは、「全ては移り変わっていく」。そのフレーズで始まる歌の続きは、「変わらないものなんてない」となる。引っかかるのはそれだけで、歌の意味を理解するにはもっときちんと聴かなければいけないんだろうが、ニーナ・シモンの情感いっぱいの声にハートをわしづかみにされたという感じかなぁ。すこ〜んとはまってしまったのだ。

 すると気になる... 誰の曲だこれは? オリジナルはどんなヴァージョンなんだろう? というので、検索を始めて、深みにはまり込んでいくのだ。これもまた、音楽中毒者の性というものでしょうな。

Quincy Jones で、検索で最初に出てきた名前は、クインシー・ジョーンズ。そうかぁ... というので、頭に浮かんだのは彼のアルバムではなくて、ジョージ・ベンソンだった。彼の大ヒット・アルバムのプロデューサーがクインシーだったことに起因しているんだろうけど、「そうだ、彼も歌っていたはずだ」と思い出したのがこのアルバム、『In Flight(イン・フライト)』。っても、どうやら、クインシー・ジョーンズがジャズからポップス... というか、プロデューサーとしての手腕を大いに発揮し始めた頃のアルバム、『Body Heat(ボディ・ヒート)』に収録されているのがオリジナルではないかと思われる。1974年に発表されたここで彼はアル・ジャロウやミニー・リパートンといったヴォーカルを起用しているんだけど、そのなかのひとりが「Everything Must Change」を作ったBernard Ighner(ベナード・アイグナー)だったんだとか。いわゆるジャズ・フュージョンからAOR的な趣を感じさせるものなんだろうが、残念ながら、このアルバムは持っていない。というので、早速注文。もうすぐ届くことになっている。

 面白いのは、最近みなさん同様にはまっているTwitterにこのことを書き込むと、音楽好きの仲間からいろいろな情報が寄せられたこと。「Everything Must Change」という曲ではなくて、『Baltimore(バルティモア)』というタイトル・トラックのオリジナルが誰かを探していると勘違いした鹿児島の友人はランディ・ニューマンの『Little Criminals』に収録されているよと教えてくれたり.... でもって、Facebookでは、Randy Crawford(ランディ・クロフォード)のヴァージョンもいいよと教えてくれた音楽評論家の仲間もいた。彼女のアルバムで、自分が持っている『Best of Randy Crawford』にライヴ・ヴァージョンが入っているんだけど、76年に発表されたデビュー・アルバム、『Everything Must Change』がそれなのかもしれないと思ってみたり。

 それだけではなく、調べていくと、この「Everything Must Change」はとてつもなく多くのヴォーカリストにカヴァーされているスタンダードで、うちの家でもいろいろみつかるのだ。例えば、オリータ・アダムスのデビュー・アルバム、『Circle of One』に収められているヴァージョンも素晴らしいし、『Higher Ground』というアルバムでカバーしているバーバラ・ストライザンドも、実は、いいのです。

吉田美奈子 ただ、こうやっていろいろと検索していて、みつけてしまった... というよりは、気付かされたのが、なんと吉田美奈子のセカンド・アルバム、『Minako』。大昔から聞いていたアルバムだったのに、このアルバムの巻頭を飾る「移りゆくすべてに」という曲が「Everything Must Change」のカバーだったとは... 今回はこれにぶっ飛ばされてしまったという感じかなぁ。この作品が発表されたのは1975年。当時はソウル系の音楽は全然といっていいほど聴いていなかったし、クレジットもこんなディテールまではチェックしていなかったから、これは吉田美奈子の曲だとしてしか覚えてはいなかったというのが... 知っている人からしたら、笑えるんだろうなぁ。が、これを『発見』して再び吉田美奈子のヴァージョンを聴くと、その素晴らしさに圧倒されるのだ。きわめてユニークでドラマチックな... まるでクラシックなミュージカル映画でも見ているようなイントロから始まるアレンジも完璧なら、オリジナルの歌詞を訳すというよりは、美しい日本語に昇華させている彼女の才能にまた愕然とさせられるのだ。しかも、ソウルを感じさせながらも、まるでシルクのような艶を持つ彼女のヴォーカルがその魅力を圧倒的なものにしている。よくもここまで完成された「本物ののカバー」をやってくれたものだと思う。幾度聴いても、これは素晴らしすぎる傑作だと思うのだ。

 そこで気になったのが時間軸。このオリジナルのことをよく知らないんだが、おそらく、有名になったのはクインシー・ジョーンズの『Body Heat(ボディ・ヒート)』ではないかと思うんだが、これが発表されたのが1974年で、『Minako』はその翌年。おそらく、ここになにかのドラマか出会いがあったんだろうなぁと思う。チャンスがあれば、吉田美奈子さんにこのあたりのお話を聞かせていただく... というのは無理かもしれないんだが、彼女の大ファンだという友人の音楽評論家だったら、このあたりの話も知っているんだろうなぁと察する。なにせ、この曲を作ったBernard Ighner(ベナード・アイグナー)のことを調べてみると、オリジナルのアルバムとして最初に発表されたのは日本録音という1978年か79年の『Little Dreamer』。結局、インターネットでこのアルバムを探し出して、コレクターズ・アイテム化しているアナログを注文してしまうことになったんだが、このアルバムが届けば、もっと詳しいことがわかるかもしれない。

Quincy Jones なんでもディジー・ガレスピーに見いだされて、ジェイムス・ムーディとも仕事をしていたというジャズ畑出身で、マルチ・インストゥルメンタリスト。詳しいプロフィールは彼の公式サイト、http://www.benardighner.com/でわかるんだが、なんでも最近アルバムを発表したらしい。当然、日本での入手は難しそうだが、どんどん気になってきている。

 ちなみに、面白いのは... なんてタイミングなんだろうと思うんだが、中目黒のエチオピア・レストラン、クイーン・シバの店主、ソロモンが最近気に入ってよく見ているのがクインシー・ジョーンズのライヴDVD、『50 Years in Music: Live at Montreux 1996』。当然のように、ここでも「Everything Must Change」が取り上げられていて、なんとシンプリー・レッドのミック・ハックネルとチャカ・カーンがデュエットしているというのが面白い。その曲の説明をしているところで、「Everything Must Change」のオリジナルが69年だとかなんだとか語っているようなんだが、一度しかその下りを見ていないので定かではない。いずれにせよ、最近ではマイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンの絡みで語られることの多いクインシー・ジョンズだが、彼の世界でこの曲が今でも大きな意味を持っているんだろうなぁということは充分に察することができた。

 さてさて、ひょんなことから、数枚のアルバムを買うことになってしまったんだが、これから届くアルバムでどんな発見があるんだろう。それが楽しみだなぁ... と思うのです。



投稿者 hanasan : 2009年09月03日 02:08

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